台湾の教育制度と特徴を詳しく解説!入試なし・昼寝の義務・実験教育

台湾の教育というと、どのようなイメージを持っていますか?

実際に台湾に住んだり、子どもが留学しなければ馴染がないかもしれません。

しかし、義務教育が延長されたり、脱詰め込み教育や先進的な実験学校などが政府によって推奨されたりと、実は教育において様々な変革が起きています。

そこで、今回は台湾でどのような教育が行われていて、どのような特徴があるかを、書籍や現地に住む友人知人への聞き込みをもとに詳しくまとめてみました。

まずは、台湾の教育制度の概要から見ていきましょう。

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台湾の教育制度の概要

項目 内容
学校制度 6・3・3・4制
義務教育 6~18歳
学校年度 8月1日~7月31日
学期制 2学期制
学費 公立:義務教育期間の授業料は無料

私立:有料(費用は学校により異なる)

(参考:外務省 諸外国・地域の学校情報 台湾

学校制度と義務教育期間

台湾では、日本と同じ6・3・3・4制が採用されています。

ただ、義務教育後の高等教育では、大学や専門学校に7年かけて通う場合もあります。

具体的には次のようになります。

教育課程

・小学校(國民小學):6年間

・中学校(國民中學):3年間

・高等学校(高級中學)または職業訓練校(高級職業学校):3年間

・大学/大学院修士課程/博士課程/専門学校:4年~7年間

台湾の義務教育期間は、日本より長い6歳から18歳の12年間です。

日本の高校にあたる高級中學、または職業訓練校にあたる高級職業学校を卒業するまでの3年間が義務教育となり、日本より長いのですね。

義務教育が長いということは、政府が子どもたちの教育の面倒をしっかり見て、社会に出る時の手助けをしてくれるということです。

そのため、社会に出た後にドロップアウトする子どもが少なくなります。

政府の教育負担は増えますが、素晴らしい試みだと思います。

台湾の学校系統図については、詳しくは台湾 国立政策研究所をご覧ください。

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就学前教育

台湾では、日本で保育園や幼稚園にあたる就学前教育が義務ではありません。

しかし、約60%の子どもが通園しています。

台湾の幼稚園には、公立、非営利、私立の3つがあります。私立の割合が約70%、残りの約30%が公立と非営利です。

ただし、非営利は幼稚園全体の2%程度しかありません。

特徴1.幼児教育期間は4つ

台湾の幼児教育期間は次の4つに分けられます。

項目幼稚園託児所
短期補習塾幼児託児保育センター
母体期間公立
非営利
私立
公立
非営利
私立
私立のみ私立のみ
受け入れ年齢3歳~生後1か月~塾により異なる施設により異なる
月額学費公立 :約1万円

非営利:約2万円

私立 :約2.5万~約10万円
公立 :約1.5万円

非営利:約2.5万円

私立 :約3万~約12万円
習い事により異なる約2万円
サービス日本の幼稚園に近い日本の保育園に近い幼児期の習い事日本の学童保育に近い

※保育料は1元(ニュー台湾ドル)=3.7円で計算。

台湾の幼稚園(幼兒園)は、日本と同じで3歳~小学校就学前までの子どもが学びます。

公立の幼稚園は小学校に併設されることが多く、夏休みなどの長期休暇は園も休みになります。

一方で、私立の幼稚園は長期休暇も預けることができます。

台湾の保育園(托兒所)は、生後1歳~小学校就学前まで通うことができます。

幼稚園に比べて、保育料がやや高めと言えるでしょう。

短期補習塾は、幼児向けの塾のようなものです。英語、絵画、音楽、スポーツなどを学びます。

月謝制のところもあれば、1回ごとにレッスン料を支払うところもあります。

幼児託児保育センターは、日本でいうところの学童保育のようなもの。

親などの保護者が、仕事などのため家庭で子どもの面倒を見ることができない場合に預けることが多いです。

安親班と呼ばれ、小学校などに付属していることもあります。

他には、小学校就学前に通うインターナショナルスクールもあります。ただ、子どもの国籍による優先順位があったり、高いレベルの英語力が求められ、さらに月額で約20万円以上するのが一般的です。

台湾の幼稚園等の施設については、全國教保資訊網を参考にしてください。

続いて、台湾の小学校についてみていきましょう。

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台湾の小学校

台湾の小学校は、「國民小學」と言います。

日本では、通学する時に子ども同士で歩いて学校に行くことも多いですよね。

しかし、台湾では親の送迎が一般的です。

また、国立大学付属の国立小学校、県立や市立の公立小学校、そして私立小学校があります。

公立学校に通う場合、日本と同じように、住む場所によって通学する小学校が決まっている学区(校区)制度があります。

日本のように、富裕層が住む高級住宅街の近くの小学校や成績の良い生徒を多数輩出している小学校に人気が集中します。

特徴2.人気の公立校に入学させるため戸籍を移す

台湾では、学区は戸籍で決まります。

そのため、子どもを自分が通わせたい人気の小学校に入れるために、戸籍を小学校の学区に移動します。

台湾では、戸籍を移すことポピュラーであり、特別なことではありません。中には、いい学校に通わせるため、血縁関係のない家族に戸籍を入れてもらうこともあるのだそうです。

また、人気のある小学校は、新入生の入学制限を設けられた総量官制学校に指定されています。

総量官制学校に指定されると、学区に何年間戸籍があるか、学区に持ち家があるかなど、更に厳しい条件が課せられるのだとか…。

希望する小学校に入学させるために、子どもが生まれてすぐに戸籍を移動する家庭も多いようです。

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特徴3.人気の私立校はさらに競争激化

台湾の私立の小学校の中でも、特に人気の高い学校は、教育熱心な家庭を中心に公立学校よりもさらに競争が激しくなります。

定員に対しての希望者が圧倒的に多いため、願書の提出日の前日に徹夜をして並ぶほど。

なぜ並ぶかというと、願書の提出が早い順に面接が早く回ってくる場合が多いという理由からのようです。

面接は早い方が有利というのが定説なのだとか。

そして、親子での面接試験で、入学の動機、親のバックグラウンド、学費をしっかりと払えるかなどの質問をされ、気の抜けない時間が続きます。

名門の私立学校は学費の高額なところが多いです。

ですが、その分すべての授業を英語で行ったり、ハイレベルな教育カリキュラムが用意されていて、名門大学への進学率も高くなります。

学歴社会である台湾では依然として名門私立の需要は高く、ここら辺は、日本の名門小学校のお受験と同じかもしれませんね。

特徴4.小学校の頃から宿題が多い

日本に比べると、台湾の小学校の宿題は多いと言われいます。

公立学校の場合は、低学年でも毎日1時間前後、私立学校にいたっては毎日2時間以上も宿題だけで時間が過ぎてしまいます。

平日最後の金曜日には、週末用の宿題もどっさり出されます。

さらに、教育熱心な家庭では、塾通いも一般的で、子どもたちは勉強漬けの毎日を過ごしています。

特徴5.お昼寝タイムが義務

日本にない特徴として、台湾のお昼寝タイムがあります。

お昼ご飯を食べた後、多くの生徒が机に突っ伏して20分~30分ほど昼寝します。中にはマイ枕を持参する生徒までいます。

これは昼寝をすることで、午後からのパフォーマンスが上がると言われているため。

校則として決められ、昼寝をしないと注意されるほどです。

これは、小学校だけでなく、幼稚園でも取り入れられ、中学校、高校、大学、社会に出てからと習慣化されているようです。

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台湾の中学校

台湾の小学生の約95%以上が日本の中学校にあたる「國民中學」に進学します。

公立学校の場合は入学試験はなく、学区で入学する学校が決まります。一方で、私立学校は入学試験や面接が行われます。

台湾の生徒の中学校での過ごし方は、日本とあまり変わりがありません。

強いてあげるならば、台湾の中学生は部活を熱心にやらないこと。

日本を上回る学歴社会の台湾では、勉強>部活のため、部活に打ち込む時間があるなら勉強する時間に充てます。

宿題も小学校時代よりたくさん出され、学校から帰宅してもテレビを見たり、ゲームをする時間はあまりありません。

それもこれも、中学校3年生の時に受ける全国統一テストで良い成績を収めるためです。

特徴6.入試はないが、テストの成績で高校が決まる

高校卒業まで義務教育である台湾には、日本の高校入試のような合否がつく試験はありません。

その代わり、中学校3年時に受ける全国統一テストの成績で、進学先の高校がきまるのです。

テストで成績が優秀だった生徒は、有名大学への進学を目指すハイレベルな高校に入学します。

その他の生徒は、高校卒業後に就職を目指す高校か、日本の専門学校のような専科学校か、職業訓練を目的とした職業学校に進学します。

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台湾の高校(3つの進路)

台湾の高校は、3つのタイプがあります。

台湾の3つの高校

高級中學:大学進学を目指す

高級職業中學:職業訓練校

5年制専科学校:高等専門学校

高級中學では、主に大学などへの進学を目指して学業中心の高校生活を送ります。

生徒の実に約95%ほどが大学に進学します。

医者など高度な学問を必要とする職業を希望する場合は、こちらに通う必要があります。

高級職業中學は、普通科の高校生が学ぶ基礎学力の他、職業訓練実習なども授業のカリキュラムに組み込まれています。

生徒の約80%は大学に進学しますが、卒業後に就職する生徒もいます。

5年制専科学校は、IT、テクノロジー、機械をはじめ、様々な専門分野の知識を学びます。

5年間学んだ後に就職を目指します。

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特徴6.大学進学率は約80%

台湾の高校生の約80%が、大学(短大を含む)に進学しています。

日本の大学進学率が約55%なので、日本を大きく上回っていますね。

台湾は学歴社会で有名です。大手企業も学歴を重視するため、有利に就活をするために多くの学生が名門大学を志望します。

ただし、大学の合格率が高い傾向にあるため、低い点数でも合格できるため、不真面目な生徒が増えているという問題もあります。

現在台湾では就職難が続いていて、大学生の立場は厳しくなっています。

台湾でも、日本と同じように、IT、情報、金融科学など就職に強い分野に人気が集まっています。

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台湾の年間スケジュール

日本と違い、台湾は2学期制をとっています。

一般的には、下記のスケジュールとなります。

台湾の学期

1学期:8月1日~翌年1月31日

2学期:2月1日~7月31日

台湾の学校年度は、8月から始まり翌年の7月に終わります。

具体的には、8月1日から1月31日までが1学期、2月1日から7月31日までが2学期とされています。

8月は夏休みのため、 上学期の授業は9月から始まります。

続いて、台湾の休暇を見てみましょう。

台湾の長期休暇

冬休み:1月中旬~2月中旬(約4週間)

夏休み:7月中旬~8月下旬(約7週間)

長期休暇は、年に2回しかありません。

中国の一部である台湾は、中国と長期休暇がほぼ同じ時期になります。

一つは冬休みで、中国の春節期間を挟む1月中旬~2月中旬までの約4週間。

もう一つが夏休みで、学期末の後から新学期までの約7週間となります。

台湾の子どもの長期休暇の過ごし方は、日本人の子どもに似ています。旅行に出かけたり、アウトドアやサマースクールに参加したりします。

進学校は、長期休暇も補修などの授業があり、休み中も勉強に明け暮れます。

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台湾公立学校の学費

台湾の公立学校では、義務教育期間の授業料は無料です。

ただ、教科書や給食、補修受講費、スクールバス、その他雑費などの費用がかかります。

他の国に比べると、公立学校の日本人の受け入れは好意的と言われています。

しかし、授業が中国語で行われるため、親のどちらかが台湾籍であり、日頃から中国語に馴染みがあるなど、子どもにある程度の語学力がなければ難しいでしょう。

実際に日本国籍の子どもの多くは、日本人学校やインターナショナルスクールに通っています。

台湾の私立学校の学費

日本人が私立学校に通う場合、日本人学校とインターナショナルスクール(インター)の2種類あります。学費は次の通りです。

学校小学校学費/月中学校学費/月高等学校学費/月
私立学校約5万~10万円約5万~10万円約5万~10万円
日本人学校約3万円約3万円
インター約20万~約25万~約25万~

※1ニュー台湾ドル=3.7円で計算。

私立学校は授業料が月額5万円あたりのところもあれば、バイリンガルスクールでは月額10万円以上するところもあります。

その他、施設利用料、スクールバス、制服代、教材費、学校への寄付などもかかります。

台湾には、台北、台中、高雄の3都市に日本人学校があります。日本人学校は授業料が月3万円ほどなので、有料ですが他の国の日本人学校と比べると比較的リーズナブルと言えるでしょう。

ただ授業料の他に、施設利用料、スクールバス、教材費、制服代などがかかります。

ただ、台湾の日本人学校の場合は、小学校と中学校までで、高校(高等部)はありません。

学費が高額なのは、やはりインターナショナルスクールです。

学校にもよりますが、小学校、中学校、高校と、いずれも月額で20万円以上の授業料を支払わなければなりません。

このほかに、私立学校と同じように、施設利用費、制服代、スクールバスの費用、補習授業の費用、学校への寄付など様々なお金がかかります。

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台湾教育その他の特徴

台湾の教育には、日本と比べて大きな特徴もう一つがあります。

それが、政府が後押しする実験教育です。

近年、台湾では実験教育が進められています。

実験教育とは、公立学校や私立学校等、世間一般の学校で行われている普通教育とは別の方針で、独特な理念に基づいて行われる教育です。

実験教育は、主に民間が経営する学校で受ける事ができ、このような学校の総称をオルタナティブスクールと呼びます。

オルタナティブスクールは、公教育・公学校とは違った選択肢として日本各地にも存在し、公学校に馴染めない子供や、学力以外の様々な能力を伸ばしたい子供、公学校での学習内容に不満がある子供が集まります。

このようなオルタナティブスクールは、日本では「学校」と認められていない場合が多いのですが、 台湾では政府が    実験教育を後押しており、法律で公立の実験学校を作ることができるようにもなったため、その数は急増しています。

ちなみに台湾初の法律実験小学校は、定員58人に対して1000人以上が入学希望し、学校周辺の地価が跳ね上がるほどの人気ぶりでした。

試験もなければ授業開始のチャイムもない、自由な学校生活です。

教室は生徒一人一人の机も配置されておらず、クラスごとに分かれている訳でもありません。

プログラミングや化学実験など様々な専門的科目がありますが、授業によって少人数グループに別れたり、皆で一つのテーマを学習したりと授業風景は多種多様です。

子供達が自分のやりたいことを自由に考え実行する学習を徹底し、将来自分の興味や関心を活していける人材を育てているのです。

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台湾の学校生活

給食

地域によりますが、台湾にも給食制度があります。 

台湾にはベジタリアンが多く、給食もベジタリアン用のメニューとそうでないメニューに分かれています。 

給食は給食センターで作られ、生徒たちは出来立てを食べることができます。

しかし、日本のように全ての生徒が同じ給食を食べるのではなく、弁当を持参する子供や、ファーストフードを買ってくる子供なども見られます。

また、学食がある学校も多く、台湾では朝食も学校で食べることができます。

少子化が進む台湾では、 学食や給食センターの経営を維持するために、 生徒の利用率を高めることが課題となっています。

放課後の過ごし方

台湾の家庭は共働きが多く、小学生のほとんどが放課後に安親班(あんちんぱん)と呼ばれる学習塾のような教室で過ごします。

日本でいう学童保育のようなもので、親が帰ってくるまでの間に小学校の宿題を見てくれたり、英語や音楽などを教えてくれます。

特に英語学習においては、重視している家庭が多く、習い事でも英会話教室は人気があります。

台湾は学歴社会とされており、学校で出される宿題も多いので、遊ぶ時間はあまりないようです。

まとめ

ここまで、台湾の教育制度について紹介してきました。

日本と比べると、台湾では様々な違いがありましたね。最後に簡単にまとめてみました。

まとめ
  • 義務教育期間が12年と長い
  • 小学校から宿題が多い
  • 昼寝が義務化されている
  • 公立学校は入試がない
  • 大学進学率が約80%と高い
  • 政府による実験教育の普及

台湾は日本と違い、高校3年間も義務教育期間のため、高校入試がありませんでしたね。

また、学歴社会のため小学校から宿題がどっさりあったり、大学進学率も約80%と他の国と比べて高いことも分かりました。

他には、昼寝タイムの義務や政府の推し進める実験教育も興味深かったです。

教育に対して、先進的な取り組みをしている台湾に、今後は今まで以上に注目が集まりそうです。

以上が台湾の教育制度と特徴でした。

もし、子どもを連れて台湾に住むことになったり、子どもが留学したいといってきた時に、参考にしていただけたら嬉しいです。

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