カナダの教育制度と特徴を詳しく解説!州で違う義務教育プログラム

カナダの教育と言えば、世界的にみても教育水準が高く、海外からの留学生も多い人気の国です。

ただ、カナダは州の裁量で義務教育期間やカリキュラムが決められているため、教育プログラムが異なっています。

そのため、実際にどのような教育制度や特徴があるか分かりにくいとも言われています。

そこで、今回はカナダの教育制度がどのようなものか、資料や友人知人への聞き込みなど様々な情報を集め、日本との違いをまとめてみました。

まずは、カナダの教育制度の概要を見ていきましょう。

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カナダの教育制度と12の特徴

項目 内容
学校制度 州により異なる
義務教育 4~18歳

※州により異なる。  

学校年度 8月中旬から9月初旬~翌年5月下旬から6月下旬

※州により異なる

学期制 2学期制

※州により異なる。  

学費 公立:授業料は無料

私立:有料(費用は学校により異なる)

(参考:外務省 諸外国・地域の学校情報 カナダ)

カナダの義務教育

10の州と3つの準州からなるカナダですが、義務教育期間は州によって異なります。

ほとんどの州は5歳・6歳~15歳、7歳~16歳の計10年間を義務教育期間としています。

ですが、州によっては18歳(高校卒業まで)のところもあったり、幼稚園の4歳から義務教育期間としている州もあります。

wikipediaに分かりやすい表がありましたので、こちらをご覧ください。

(参考:Education in Canada

カナダでは、例えば小学校でもElementary やPrimaryなど、州によって学校の表記が異なる場合があります。

  • 幼稚園 :Kindergarten
  • 小学校 :Elementary/Primary
  • 中学校 :Junior High School/Intermediate School/Middle School/Junior Secondary
  • 高等学校:Senior Secondary/Secondary/Senior High

小学校などの呼び方も違いますし、通学の期間も4年間の小学校もあれば6年間のところもあるため、分かりにくいかもしれませんね。

また、州によって小・中一貫校であったり、中・高一貫校であったりするので、さらに複雑に思えます。

おおまかな義務教育期間の範囲もお伝えしておきましょう。

【カナダの義務教育期間】

  1. 幼稚園   :4~5歳(4つの州のみ)
  2. 小学校   :6~14歳(州により異なる)
  3. 中・高等学校:12~18歳(州により異なる)
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特徴1.幼稚園から義務教育になる4つの州

カナダの次の4つの州は、幼稚園から義務教育になります。

  • オンタリオ(4歳~)
  • プリンスエドワードアイランド(5歳~)
  • ブリティッシュコロンビア(5歳~)
  • ニューブランズウィック(5歳~)

幼稚園(Kindergarten)は、州によって「Praimary」とも呼ばれます。

オンタリオ州だけが4歳から義務教育として幼稚園に通います。

残りの3つの州が5歳からです。

特徴2.小・中・高等学校の期間も州で異なる

小学校(初等教育)、中学校(中等教育)、高等学校の期間も州によって異なります。

カナダでは、小学校から高校までの12年間を「グレード1~12」と呼びます。

ケベック州では、初等教育である小学校は6年間ですが、オンタリオ州は8年間もあります。

また、ユーコン州のように、小学校と中学校が組み合わさっている(どちらもElementary Schoolに属する)というケースもあるのです。この州は高校生活が4年間です。

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特徴3.多言語と接する機会が多い

カナダで生活していると、様々な言語を耳にする機会があります。

カナダの公用語である英語とフランス語はもちろんのこと、公用語以外の言語を話す住民が600万人近くいるためです。

公用語以外で多いのが、中国語、イタリア語、ドイツ語、韓国語など。

異なる言語を話すということは、異なる文化と触れ合う機会も多いということ。

小学生の時からグローバルな環境で過ごせるというのは、子どもにとって大きなメリットになるはずです

特徴4.中・高等学校では自ら選択する科目が増える

カナダの中学校や高等学校では、自分で選択する「選択科目」の授業が増えてきます。

それは、早い段階で自主性を強化することを目的としているため。

時間割も個人個人で行う学校が多く、必須科目と自分で選択した科目を学んでいきます。

また、授業は科目ごとに教室が分かれているので、その都度移動する必要があります。

大学で講義を受けるのと同じと考えてよいでしょう。

日本の多くの中学校や高校のように、自分たちの教室で授業を受けるということが少ないのですね。

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特徴5.高校受験がない

カナダの公立高校に入学する時、高校受験はありません。

地元の生徒でしたら、誰でも入学することができます。ですから、基本的には自宅の近くの高校に通います。

そのため、日本でいういわゆる「進学校」とか「偏差値の低い高校」というものがほとんどなく、生徒の学力はバラバラです。

しかし、成績が優秀な生徒だけが受けられるIB(International Baccalaureate)クラスやAP(Advanced Placement Program)クラスを設けている学校も中にはあります。

これらのクラスは、授業の質も非常に高く、宿題などの課題もたくさん出されます。

また、カナダにも富裕層が住む地域があり、そこは教育にお金をかけている親が多いため、他の高校に比べると学力が高いと言われています。

一方で、私立の高校では、入学するための試験や面接などがあります。

特徴6.公立学校が90%以上

カナダの小・中・高等学校の90%以上が公立学校です。

義務教育期間が高校までという州も多く、地元の学生はほとんどが公立学校に通います。

ただ、公立学校には入学試験がなく、学力がバラバラという理由で、私立学校を選ぶ家庭もあります。

私立学校は、少人数制で学力別にクラスが分けられています。また、様々な人種が集まっている国のため、宗教上の理由で私立学校を選ぶ生徒もいるようです。

続いて、カナダの義務教育後の進路について見ていきましょう。

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義務教育後の進路

カナダの義務教育後の進路ですが、約70%近くの学生が大学に進学します(4年制大学・大学院・短期大学を含む)。

日本の大学進学率は約65%ですので、カナダの方が少し多いですね。

カナダには、公立の州立大学が90校の他、短期大学が170校ほどあります。

ちなみに、世界大学ランキングのトップ20入りの常連である名門トロント大学も州立大学。

特徴7.大学入試はないが、高い英語力は必須

カナダでは、大学入試もありません。

試験ではなく、高校時代の成績など総合的な評価によって合否が決まるのです。

トロント大学などの名門に進学したいならば、高校時代の成績がトップクラスでなければなりません。

中でも、英語力は高いレベルを求められ、入学の条件としてTOEICで850~900点くらいは必要とされます。

また、カナダは州ごとによって、大学に特色や強みがあります。

それぞれの分野が高レベルで、それが欧米など他の国々に認知されているため、カナダの大学を卒業すると就職に有利と言われています。

4年制の大学でも、3年で卒業できるコースがあったりしますが、単位を取得して卒業するまでが難しいのです。

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カナダの年間スケジュール

日本と違い、カナダの学校の多くは2学期制をとっています。

一般的には、下記のスケジュールとなります。

【カナダの学期】

  • 1学期:9月~翌年1月
  • 2学期:2月~6月

日本は4月が新学期ですが、カナダは9月あたりから新学期がスタートする学校が多いです。

具体的には、8月下旬から9月上旬に新学期が始まり、翌年1月までが1学期、2月から6月までが2学期。

特徴8.学期制も州によってバラバラ

2学期制をとっている学校が一般的ですが、他にも日本と同じ3学期制や1学期制のところもあります。

3学期制を採用している学校では、9月~12月のクリスマス休暇前を1学期、クリスマス休暇の後~翌年3月を2学期、4月~6月までを3学期としているところ。

1学期制は、9月~翌年6月までを学期で区分けしないというものです。

続いて、カナダの長期休暇を見てみましょう。

【カナダの長期休暇】

  1. クリスマス休暇:12月下旬~翌年1月上旬の約2週間
  2. 春休み:3月中旬~3月下旬の約2週間
  3. 夏休み:7月~8月末の約10週間

日本と比べると、冬休みや春休みは同じくらいの長さで、夏休みが2か月あって長い印象ですね。

カナダの子どもの夏休みの過ごし方では、サマーキャンプに参加するのが一般的。

キャンプと言っても、日帰りであることも多く、スポーツ、絵画、工作、レゴ、プログラミングなど様々なプログラムが用意されています。

カナダでは夏休みの宿題というのが少ないので、子どもは遊びを満喫するようです。

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カナダの学費

カナダの公立学校では義務教育期間はすべて授業料が無料です。

公立学校が90%以上なので、ほとんどの家庭は小・中・高の授業料を支払わなくて良いのです。

教科書は学校が無償でレンタルしてくれる仕組みで、 使い終わったら原則返却しなければなりません。

よって、教科書には書き込みなどをしないよう指導されます。

私立は有料で高額!

また、私立学校に通う場合は学費は有料になります。学校にもよりますが、最低でも年間で300万円以上は必要と考えてください。保護者に寄付金を募る学校もあります。

私立学校の多くは、エリート育成のためのハイレベルな教育や宗教などに基づく独自の教育理念を持って運営しています。

男子校、女子高、共学と様々で、全寮制もあります。

カナダの名門ボーディングスクール(全寮制寄宿学校)では、年間500万~600万円もかかります。ただ、

カナダのボーディングスクールの様子は、こちらの動画でご覧ください。

年間の学費が1,600万円以上で世界一高いスイスのボーディングスクールなどに比べると、カナダのボーディングスクールは比較的リーズナブルのため、海外の富裕層には人気があるようです。

特徴10.留学生は義務教育期間も有料!

私たち日本人がカナダに留学する場合、義務教育期間も学費が有料になります。

公立学校でも、年間の授業料だけで100万円~140万円ほどかかります。さらに、制服や体操服など学校で必要なものを購入しなければなりません。

私立学校ではその倍以上で、年間の授業料だけで300万円以上は覚悟しなければならないでしょう。

さらに、私立学校への入学を希望する場合、語学力などを含めて公立学校に比べると留学生の受入基準が高いと言われています。

実際に、カナダでは留学生のほとんどが公立学校に通い、私立学校の受け入れは少ないようです。

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カナダ教育その他の特徴

カナダの教育は、日本と比べると他にも特徴があります。

カナダ教育その他の特徴

  1. 教育の管理・運営は完全な地方自治制
  2. ホームスクーリングの選択が可能

それでは、ひとつずつ見ていきましょう。

特徴11.教育の管理・運営は完全な地方自治制

日本では、教育制度や教育内容は全国一律ですが、カナダはその全てを各州が管轄しています。

そのため生徒が学ぶ学習内容も、州によって大きく違います。

また、カナダの教育システムが日本と大きく違う点の1つに、学校の先生の働き方があります。

日本では考えられませんが、カナダの教員は副業が認められており、ほとんどの教員が副業しています。

先生達は自分の副業の経験を活かしたオリジナルの方法で授業を行う為、 授業の内容もバラエティに富んだものになるのです。

このように、カナダの先生は個性豊かである為、学校にはユニークな選択科目があります。

ある州ではボランティア活動の授業があり、子供の頃から社会貢献の大切さを学んでいます。

他にも、美容の授業や料理の授業など、生徒たちは自分の個性に合わせた科目を選択し、授業計画を組むことができます。

カナダでは名門大学や学業成績などを好む風潮は無く、就職には学生時代の経験や人間性などが重視されているのです。

特徴12.ホームスクーリングの選択が可能

カナダの教育の特徴として、義務教育を家庭で行うというホームスクーリングの選択が認められている点があります。

カナダの代表的なホームスクーリングのサイトがThe Canadian Online Homeschool ConferenceNational Home Education Conference です。

ホームスクーリングといっても、本来学校で教わるカリキュラムに従って学校のスピードと同じように勉強する種類と、子どもの関心の高いものや好きなコンテンツを選択して勉強する種類に分かれます。

カリキュラムは親子で話し合って決めるのですが、学校に沿ったカリキュラムを選ぶ方が多いようです。

なぜなら、認定試験の基準も学校のカリキュラムに沿っているためです。

日本では認められていないホームスクーリングですが、カナダでも採用するにはいくつが条件があります。

例えば、落ち着いて学習できるスペースの確保、毎日一定時間を子どもの学習指導に充てられる保護者が必要なことなど。

さらに、子ども自ら節度のある生活をしなければならないので、慣れるまでは難しいかもしれませんね。

カナダでは、ホームスクーリングをサポートするためのオンラインサービスを行っている会社も多くあります。

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カナダの学校生活

給食

日本は毎日クラスの皆で同じ昼食をとりますが、カナダにはそのような習慣はありません。

家からお弁当を持参するか、ホットランチプログラム(Hot Lunch Program)と呼ばれる希望者のみの給食制度を利用します。

この給食制度は、学校によって提供頻度が決まっており、毎日のところもあれば週に1回のところもあります。

メニューは、日本のように栄養バランスがしっかりと考えられたものではなく、ハンバーガーやサンドイッチ単品などの簡単なもの。

ただし、カナダでは共働き世帯が多いため、ホットランチプログラムのニーズは高いようです。

放課後の過ごし方

カナダでは、放課後は塾や習い事ばかりではなく、遊ぶ時間を重視にしている家庭も多く見られます。

しかし、カナダでは子供を1人にしてはいけない決まりがあり、ある程度の年齢までは登下校も保護者同伴で行います。

そのような背景から、放課後に子ども達が遊ぶ時も、迎えに来た保護者がずっと付き添います。

高校生になると、放課後は学校のクラブ活動か、自立の一環としてアルバイトを始める学生も多く見られます。

カナダでは16歳で大人の仲間入りだと考えられている為です。

日本では考えられませんが、カナダでは高校での単位にも、アルバイト経験は必須とされています。

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まとめ

ここまで、カナダの教育制度について紹介してきました。

日本と比べると、カナダでは様々な違いがありましたね。最後に簡単にまとめてみました。

まとめ
  • 州ごとに義務教育プログラムが異なる
  • 約90%が公立学校
  • 幼稚園から義務教育がスタートする
  • 多言語と接する機会が多い
  • ホームスクーリングの選択が可能

最も大きな特徴は、州ごとに義務教育期間のプログラムが異なるという点でしたね。

州によっては義務教育期間が4歳から始まり、18歳までのところもありました。

公立学校が90%で、様々な人種が集まるため、公用語の英語やフランス語のほか、多くの言語が学校で飛び交います。

アメリカと同じようにホームスクーリングが選択できるというのも興味深いですね。

以上がカナダの教育制度と特徴でした。

もし、子どもを連れてカナダに住むことになったり、子どもが留学したいといってきた時に、参考にしていただけたら嬉しいです。

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