中国の教育制度と特徴を詳しく解説!都市部の学力は世界ナンバー1

いま中国の学力の高さが世界を驚かせています。

その理由のひとつが、国際学力テストPISAで世界1位の座を射止めたからです。

中国の教育は、ここ10年で飛躍的に向上し、いまや世界ナンバー1の実力まで登りつめました。

どのようにして今の地位を築いたのか、教育熱心なお父さん、お母さんは気になるところかと思います。

そこで、今回は中国でどのような教育が行われていて、どのような特徴があるかを、書籍や現地に住む友人知人への聞き込みをもとに詳しくまとめてみました。

まずは、中国の教育制度の概要から見ていきましょう。

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中国の教育制度の概要

項目 内容
学校制度 6・3・3・4制

※一部地域で5・4・3・4制

義務教育 6~15歳
学校年度 9月1日~7月中旬
学期制 2学期制
学費 公立:義務教育期間の授業料は無料

私立:有料(費用は学校により異なる)

(参考:外務省 諸外国・地域の学校情報 中国

学校制度と義務教育期間

(参考:文部科学省 中国の学校系統図

中国では、一般的に日本と同じ6・3・3・4制が採用されています。

具体的には次のようになります。

教育課程

小学校:6年間

中学校(名称 初級中学校):3年間

高等学校(名称 高級中学校):3年間

大学:4年間

中国の義務教育期間は、日本と同じ6歳から15歳の9年間です。

日本と同じ小学校6年間、中学校3年間が一般的です。この義務教育期間は、ほぼ100%近くの子どもが就学しています。

中国では、中央政府機関の教育部が統括していますが、地域によって経済格差が大きいため、細かな裁量は地方に委ねています。

そのため、小学校を6年にできない農村部、先進的な教育の実験学などでは、小学校5年間、中学校4年間とする5・4・3・4制を採用している地域もあります。

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就学前教育

中国では、日本で保育園や幼稚園にあたる就学前教育は義務ではありません。

ただ、約75%以上の子どもが通園しています。

中国の幼稚園は幼儿园(ヨウアーユエン)と呼び、公立の幼稚園では満3歳から年少に入り、年中、年長と経て小学校に上がります。

中国の幼稚園は、公立と私立(インターナショナルスクールを含む)があり、公立の割合が約40%、私立が約60%です。

項目公立幼稚園私立幼稚園
割合約40%約60%
入園満3歳~0歳~
月額保育料約5千円~2万円約4万5千円~15万円

公立の幼稚園に通うためには、当地域の戸籍、当該地域内の不動産を持っているなど、いくつか条件をクリアしなければなりません。

保育料は、日本と同じで公立と私立で大きな差があります。

特徴1.保育園がない

日本のように0歳児から入園できる保育園が、中国にはありません。

そのため、幼稚園に入るまでは家庭で育てる場合が多いです。親が面倒を見られない時は、祖父母や親戚に預けたり、中にはベビーシッターを雇う場合もあります。

ただ、私立の幼稚園の中には、0歳児から入園できるところもあるので、共働きの家庭は私立の幼稚園を利用します。

続いて、中国の小学校についてみていきましょう。

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中国の小学校

中国では、小学校の多くは公立学校です。日本と同じように、住む場所によって通学する小学校が決まっている学区(校区)制度があります。

ただ、小学校入学の条件として、中国の幼稚園と同様に、学区内の戸籍、学区内の不動産の所有などの条件があります

特徴2.重点小学は教育熱心な親に人気

中国には、「重点小学」と呼ばれる学力の高い子どもが通う小学校があります。

教育熱心な親は、人気のある重点小学の学区に入るために、わざわざ不動産を購入することもあるようです。

このような重点小学の学区は学区房(シュエチーファン)と呼ばれ、不動産価格は非常に高額です。

ちなみに、この重点小学への入学は、無作為に決められます。

一方で、中国の私立の小学校では、入学試験や面接がある場合がほとんどです。そのため、事前に入学申請を早めに出さなければなりません。

私たち日本人の子どもを中国の小学校に入学させる場合は、言語の問題(公立小学校の授業が中国語メインのため)私立学校を選択するケースが多いです。

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特徴3.毎日7時限目までみっちり授業

中国では、小学校の頃から7時限目まで、みっちり授業を行う小学校が多いと言われています。

例え5時限目に授業が終わっても、出された課題を終わらせるために再び机に向かうことになります。

毎日の宿題や課題もたくさん出され、放課後も勉強に明け暮れる子どもが多いのです。

特に、教育熱心な親が多い都市部の小学校ほど、この傾向が顕著に現われます。

それと、授業の合間にラジオ体操をするのも、中国特有かもしれませんね。その分、日本では一般的なプールの授業が中国ではありません。

特徴4.小学校でも飛び級制度や落第がある

中国の小学校には、飛び級制度と落第があります。

成績優秀な子どもには、英才教育を施すことで実力をつけさせ、将来社会を引っ張っていくリーダーを育てようとする目論見があるのですね。

飛び級をするためには、飛び級専門の試験への合格や、担任などの推薦が必要です。

一方で、テストの成績が極めて悪い子どもには、落第(留年)という厳しい現実が待っています。日本の小学校ではまずありません。

同じ義務教育期間でも、飛び級と落第制度は中国の教育現場の弱肉強食の世界を垣間見える瞬間ともいえるでしょう。

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中国の中学校

日本の中学校にあたる初級中学校では、公立学校の場合は入学試験はなく、学区で入学する学校が決まります。

一方で、私立学校は入学試験や面接が行われる場合がほとんどです。特に都市部にある名門私立中学校には、入学希望者が殺到し、激しい受験競争が繰り広げられます。

中国では、都市部と農村部の教育への温度差は全く異なります。

富裕層の集まる都市部では、小学生の時以上に勉強に力を入れる子どもが増えます。

日々厳しい勉強に耐え、中学校3年時の6月頃に行われる、中考という全国統一入試に備えます。これは日本の公立校入試に該当します。

この中考の点数によって、中学校卒業後の進路が決まります。また、中考は中学校の卒業証書を取得するためのものでもあり、点数が低すぎると落第することもあります。

都市部に比べると、農村部では教育にお金をかけることができない家庭も多いです。

金銭的な事情などで、退学せざる負えない生徒もいるようです。

特徴5.受験科目に体育の実技テストがある

中国の高校入試の受験科目の1つに体育の実技テストがあります。

これは体育系の高校ではなく、進学を目指す全ての生徒が受けなければなりません。

体育の試験は、毎年3月~5月に行われます。

必修科目と選択科目に分かれ、地域によってテストの内容は異なります。

例えば、必修科目には1,000mや2,000mの持久走があります。また、選択科目には、サッカー、バスケットボール、バレーなどの球技から、懸垂や腹筋などの基礎体力を計るものまであります。

体育の実技テストの対策のため、親や兄弟と特訓したり、塾で教えてもらいます。

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中国の高校(4つの進路)

高校入試の結果により、進学を選んだ生徒は次の4つの進路を歩みます。

中学卒業後の4つの進路

高級中学(3年間):普通高校

中等専業学校(4年間):職業教育を行う専門学校

技術労働者学校(3年間):技工学校

職業中学(2~3年間):職業訓練高校

学生の約60%は、日本の普通高校にあたる高級中学に進学します。

大学に進学することを目的としていて、こちらには3年間通います。

特に名門大学を目指す生徒の多い高校では、夕方までの授業を受け、夕飯を食べた後に19時から23時近くまで補充の授業が行われます。

中等専業学校は、職業教育を学ぶ専門の学校です。

普通中等専業学校と成人中等専業学校の2種類があります。4年間通うのが一般的です。

普通中等専業学校は、中学校を卒業したばかりの生徒が対象です。一方、成人中等専業学校は、中学校を卒業した後に就職し、働きながら学びたいという生徒が対象です。

工業、商業、医学、薬学、林業、農業、IT、建築、会計、経済、体育、芸術などを学びます。卒業後は就職します。

技術労働者学校(技工学校)は、技術系の職業に就職を希望する生徒を対象とした学校です。

こちらも卒業後の就職を目指したコースです。

通常は3年間通いますが、専攻する分野によって1年で終わる場合もあれば、5年かけて卒業する場合もあります。

主に、機械、電気、IT、調理師、美容師、工芸などを学びます。技工学校では、技術系の授業を実習するために工場や店舗を使用します。

職業中学は、高級中学で学ぶ普通教育と職業技術教育を結び付けたもので、一般的には2年~3年間通います。

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特徴6.大学進学率は約50%

UNESCO(国際連合教育科学文化機関)の2018年度の統計によりますと、中国の大学進学率(日本での四年制大学・大学院、短期大学など全て含む)は約50%でした。

2012年は約30%でしたので、ここ10年近くで大幅にアップしたと言えるでしょう。

日本の大学進学率が約55%なので、日本に迫る勢いです。

ちなみに、中国では国立や公立大学の割合が多く、全国にある約3,000校のうち、約2,100校が国立または公立です。

また、政府に認められておらず、学位の授与もできない偽大学も増えてきていて問題となっているようです。

特徴7.国家重点大学が人気

中国で人気の高い大学が、中国政府より権威のある大学と認められ、予算を優先的に配分される国家重点大学です

予算を優先的に配分されるため、施設を充実させたり、最先端の機械やテクノロジーを導入することができ、他の大学よりも高度な研究などを行うことができます。

2020年世界大学ランキングで総合23位の清華大学、24位の北京大学をはじめ(東大は36位)、中国全土で約110校あります。

中国の大学進学を目指す高校生は、国家重点大学を目標に日々勉強に励むのですね。

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中国の年間スケジュール

日本と違い、中国は2学期制をとっています。

一般的には、下記のスケジュールとなります。

中国の学期
1学期:9月1日~翌年1月中旬
2学期:2月中旬~7月中旬

中国の学校年度は、9月から始まり翌年の7月に終わります。

具体的には、9月1日から翌年1月中旬までが1学期、長期休暇を挟んで2月中旬から7月中旬までが2学期とされています。

続いて、中国の休暇を見てみましょう。

中国の長期休暇
冬休み:1月中旬~2月中旬(約4週間)
夏休み:7月中旬~8月下旬(約7週間)

長期休暇は、年に2回しかありません。

一つは冬休みで、中国の春節期間を挟む1月中旬~2月中旬までの約4週間。

もう一つが夏休みで、学期末の後から新学期までの約7週間となります。

日本人の子どもたちと同じように、旅行に出かけたり、キャンプなどのアウトドアをするのが一般的です。

しかし、熾烈な受験戦争が話題となっている中国の都市部では、冬休みや夏休みも習い事や塾に明け暮れている子どもも多いようです。

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中国公立学校の学費

中国の公立学校では、義務教育期間の授業料は無料です。

学校選択制を利用した場合は、手続きに費用がかかります。学校選択制とは、学区ではない学校に、協賛金を支払うことで入学することを言います。

また、給食、補修受講費、スクールバス、学童保育、その他雑費などがかかることもあります。

日本国籍の子どもを中国の公立学校に通わせることは基本的には難しいと考えてください。

中国の私立学校の学費

日本人が私立学校に通う場合、日本人学校とインターナショナルスクール(インター)の2種類あります。

学校小学校学費/月中学校学費/月高等学校学費/月
日本人学校約4万~5万円約4万~5万円約15万円
インター約20万~35万円約15万~35万円約20万~35万円

中国には、日本人学校が10校ほどあります。ほとんどが小中学校までで、高校は上海日本人学校高等部しかありません。

日本人学校の場合は、小学校と中学校の学費は月額4万~5万円ほどですが、高等部になると一気に月額15万円近くまで跳ね上がります。

もっと高額なのがインターナショナルスクールです。

学校にもよりますが、小学校、中学校、高校と、いずれも月額で20万円~35万円ほど高額な授業料を支払わなければなりません。

このほかに、施設利用費、制服代、スクールバスの費用、補習授業の費用、学校への寄付など様々なお金がかかります。

そのため、中国でも一握りの富裕層しかインターナショナルスクールに通わせることができないようです。

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中国教育その他の特徴

中国の教育は、日本と比べると他にも特徴があります。

中国教育その他の特徴

  1. 国際学力テストで世界1位
  2. 海外留学が活発
  3. オンライン学習の普及

それでは、ひとつずつ見ていきましょう。

国際学習到達度調査(PISA)世界1位

OECD(経済開発協力機構)が3年ごとに実施している国際的な学習到達度に関する調査PISA。

この調査は、読解力・数学的リテラシー・科学的リテラシーの3つの項目で行われます。 

2018年のPISAの結果で前回1位のシンガポールを抜いて、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの全て1位の完全Vを達成し、世界を驚愕させました。

なぜなら、わずか3年前の前回の結果では、科学的リテラシー10位、数学的リテラシー6位、読解力にいたっては27位と、決してずば抜けた成績とはいえなかったからです。

中国で2018年の調査に参加したのが、富裕層が多く教育熱心な北京市、上海市、江蘇省、浙江省の4行政区のみであったとはいえ、今や中国は世界トップクラスのが学力を保持しているというのは間違いありません。

1980年以降、中国では優秀な人材育成のため、教育の質をあげることを目的とした教育改革が行われてきました。

 この改革は見事PISA調査で全分野世界1位という成果を生み、 世界中が中国の教育制度に注目しています。

海外留学が活発

国際化が進む中国では、海外に留学する学生も多く見られます。

留学先は長らくアメリカが人気だったのですが、近年イギリスの人気が急上昇しているようです。

その背景には、イギリスの教育省と国際貿易省が共同で発表した新国際教育戦略で、条件付きでビザの有効期限を延長できる等の措置が取られた事があります。

また、中国では、留学を希望する学生の低年齢化も見られます。

海外留学で大学院の修士課程を学ぶ学生は減り、海外の中学や高校に入学する学生が増加傾向にあります。

オンライン学習の普及

中国はオンライン学習の先進国としても知られています。

勉強に必要な学習アプリは、日々様々な企業が開発しています。

中国の学校では毎日夕方5時〜6時に授業が終わり、帰宅後子供たちは大量の宿題に取り掛かります。

塾や習い事もこなさなければならないため、参考書代わりであるアプリは宿題支援に欠かせません。

「自宅でアプリを使って学習する」と聞くと、サボったりしてしまいがちだと考えてしまう親もいるかもしれません。

ですが、約300人もの生徒が同時にオンラインで授業を受けられ、顔認証での出欠確認、授業態度のチェックもされる、ハイテクなオンライン学習機能もあります。

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中国の学校生活

給食

中国でも、日本のように栄養バランスのとれた食事を学校で生徒全員に提供する「栄養制度」と呼ばれる取り組みが一部の地域で始まっています。

しかし、まだ多くの地域では給食制度はなく、昼休みに一旦帰宅したり、食堂で各自好きな物を食べるという学校が多いようです。

中国では日本の学校給食制度に称賛の声が上がっており、特に衛生基準の高さは注目されています。

安全でバランスの取れたメニューを皆で食べるという日本の給食制度は、当たり前のようで実はとてもありがたい制度なのですね。

放課後の過ごし方

中国は学歴重視の社会であり、親は子供が幼児の頃から早期教育を受けさせるなど非常に教育熱心です。

日本の学校では、生活態度や授業の積極性も含め、学業と同時に人格形成面も重視されますが、中国ではテストの点数が全てです。

たくさんの宿題が出されるので、放課後も遊ぶ時間はありません。 

さらに週末まで塾に通い、勉強漬けの日々です。

学業重視の忙しい子供達ですが、 受験生以外の学生は習い事にも時間を割いています。

特に国際化社会に欠かせない英語や、指先の動きが脳の発育に良い影響を与えるというピアノは人気です。

サッカーや野球等のスポーツ系も日本と同様に人気ですが、学年が上がるにつれて学習塾を優先させ、小学校中学年~高学年で辞めていく家庭が圧倒的に多いようです。

まとめ

ここまで、中国の教育制度について紹介してきました。

日本と比べると、中国では様々な違いがありましたね。最後に簡単にまとめてみました。

まとめ
  • 小学校から朝から晩まで勉強漬け
  • 小学校から飛び級や落第あり
  • 高校入試に体育の実技がある
  • 大学進学率は50%程度
  • 国際学力テスト世界1位
  • 海外留学が活発
  • オンライン学習の普及

受験競争が激しい中国では、小学校1年生の時から7時限目までみっちり授業がありました。

さらに、日本にはない飛び級制度や落第もあります。

また、高校入試で体育の実技テストがあるのもビックリでしたね。

他には、国際学力テストで世界1位になり、優秀な生徒は海外留学に行くのが一般的になっています。これからさらに中国の教育に注目が集まるのは間違いないでしょう。

以上が中国の教育制度と特徴でした。

もし、子どもを連れて中国に住むことになったり、子どもが留学したいといってきた時に、参考にしていただけたら嬉しいです。

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