日本のお隣の国である韓国。
韓国というと、受験戦争と呼ばれるほど各家庭が教育に熱心だったり、日本人よりも英語力がはるかに高いなど、一度はニュースで耳にしたことがあるかもしれませんね。
はたして、韓国教育の実態はどうなのでしょうか?
また、日本と比べて教育制度や特徴にどのような違いがあるのか興味深いところです。
そこで、今回は韓国の教育制度がどのようなものか、資料や知人への聞き込みなど様々な情報を集め、日本との違いをまとめてみました。
まずは、韓国の教育制度の概要を見ていきましょう。
韓国の教育制度と特徴
項目 | 内容 |
---|---|
学校制度 | 6・3・3・4制 |
義務教育 | 6~15歳 |
学校年度 | 3月~翌年2月末 |
学期制 | 2学期制 |
学費 | 公立:授業料は無料
私立:有料 ※学校によって異なる |
(参考:外務省 諸外国・地域の学校情報 大韓民国)
韓国の義務教育
韓国の義務教育は、日本と同じ6~15歳の9年間です。
具体的には、小学校に入学した後の6年間、中学校に入学した後3年間になります
【韓国の義務教育期間】
韓国の小学校は、公立学校が約5,000校、私立学校が約80校と、圧倒的に公立学校が多いです。
もちろん、日本のように、韓国でも名門の私立学校が存在します。
ソウル市内にあるヨンフン小学校、ウチョン小学校などがそうです。
高額な学費と入試競争率は5倍以上で、なかなか入ることが難しい超名門。
ただ、韓国で名門私立に通う場合、入学する方法が特殊で…
特徴1.私立小学校への入学は抽選で決まる
韓国で私立小学校に通えるかどうかは、抽選で決まります。
運に味方してもらった子どもが通えるという事実…。
日本では、試験で合否が決まる学校がほとんどなので、驚きですよね!
ただし、名門私立学校では、学校説明会などの後、保護者と子どもに対して面接を行います。
そこで、子どもを学校に任せっきりにしないか、親や家族がしっかりと子どもの勉強を見てあげられるか、学校行事にも休まず参加できるか、親が授業料をきちんと払えるかなど厳しく聞かれるようです。
私立といってもレベルに違いはあるでしょうが、名門は日本と同じように大変そうですね…。
特徴2.中学受験はない
韓国では、中学校の入学試験はありません。
小学校の内申点の成績で、進学する中学校が決まります。
ただ、韓国では原則として、住んでいる地域が指定する中学校へ入学しなければならないというルールがあります。
特に、ソウルの富裕層エリアである江南(カンナム)は、教育の質が特に優れているとされ、カンナムの中学校に子どもを入学させるために、江南に引っ越す家庭まであるようです。
しかし、学校のカリキュラムや教育の質が、高校、大学進学へと大きく関わってくるため、教育熱心な親は子どもの進学を優先させるのでしょう。
義務教育後の進路
中学校を卒業すると、99%近い生徒が高校に進学します。
日本の生徒も99%近くが高校に進学するので、差はありません。
日本では、高校に入学する時に高校受験を受けるのが一般的です。
特徴3.高校受験もない
しかし、韓国では高校受験がないのが一般的です。
大学に進学する生徒が多い韓国では、「高校は大学へ進学するための準備を行う学校である」と位置付けられています。
ただし、入学試験が必要な高校もあります。
入学試験が必要なのは次の3つです。
【入学試験のある高校】
- 科学英才学校
- 特殊目的高校
- 自立型私立高校
科学英才学校は、非常に成績が優秀な学生だけを集めた、韓国屈指のエリート校です。
国家的にエリートを育成するという目的のもと、2000年に制定された英才教育振興法により指定された高校でもあります。
理数系に強い学校、外国語など文系に強い学校などがあります。
少人数クラスで、徹底的に教育され、特に優秀な生徒は特定の大学に2年生から編入(いわゆる飛び級)できます。
全寮制の学校が多く、寮費は無料で、生徒は奨学金をもらいながら学びます。
特殊目的高校とは、体育、芸術、外国語などの特定分野を専門に英才教育を行っている高校です。
特殊目的高校に入学するには、受験勉強をこなし、試験に合格しなければなりませんが、志望する生徒は毎年たくさんいます。
特殊目的高校に入学するには、受験勉強をこなし、試験に合格しなければなりませんが、志望する生徒は毎年たくさんいます。
それは、名門大学は特殊目的高校の卒業生を優先し、合格させると考えられているからです。
自立型私立高校は、独自の理念で運営する私立高校です。
約40校ほどあり、ソウルに多いですが、全国に点在しています。
多くは全寮制であり、学費は公立高校よりも2~3倍ほど高額。
しかし、ソウル大、高麗大、延世大学などの難関大学合格者が多いため、教育熱心に家庭には人気です。
特徴4.韓国の高校の無償化が進む
実は、韓国では高校の無償化が進んでいます。
学費が有料である外国語高校、国際高校などの特殊目的高校、自律型私立高校を、2025年より高校受験のない公立の一般高校に転換するということが韓国政府によって発表されました。
そのため、一般高校と同じで学費が無償になります。
ただし、科学英才高校などは残るようで、生徒が集中しないように今後の対策が課題になっています。
特徴5.4年制大学の進学率は60%以上
韓国の高校生は、大学などへの進学率がなんと95%以上!
内訳は、4年制大学進学率が60%以上、短大や専門学校への進学率が35%以上です。
ちなみに、日本はというと、大学などへの進学率は60%ほどでかなりの差がありますよね。
これが、韓国が学歴社会と呼ばれる所以です。
特徴6.大学1~2年で軍隊入隊のため休学!
ただ、韓国の男子学生は軍隊への入隊のために、大学1年~2年生の時に、大学を休学する場合が多いのです。
軍隊への入隊で休学する時は、その期間は学費は払わなくて大丈夫。
軍隊は2年以下ですが、兵役を終えて大学に戻る学生と、授業についていけなくなるのが心配で勉強するために休学を延ばす学生もいます。
韓国の年間スケジュール
日本と違い、韓国は2学期制をとっています。
これは公立も私立も一緒。
一般的には、下記のスケジュールとなります。
【韓国の学期】
- 1学期 3月1日~7月中旬
- 2学期 8月下旬~12月下旬
日本は4月が新学期ですが、韓国はそれより1か月も早い3月になります。
3月に新学期が始まり、7月中旬までが1学期、8月末から12月末までが2学期です。
日本の場合は4月~翌年3月の生まれが同学年。ですが、韓国は1月~12月生まれが同学年とされています。
続いて、韓国の長期休暇を見てみましょう。
【韓国の長期休暇】
- 夏休み:7月下旬~8月中旬の約4週間
- 冬休み:1月中旬~2月下旬の約6週間
夏休みが日本よりも短いですね。
その反面、冬休みと春休みが合体しているので、日本の夏休みと同じくらい長くなります。
この1月~2月の冬休み期間に、短期留学や海外旅行を企画する家庭が多いようです。
また、旅行に行く時は、学校に現場体験学習という名目で申請をすれば、休んでも出席扱いになるという制度もあります。
韓国には旧盆、旧正月があり、日本よりも休日が多く設けられています。
韓国の学費
韓国の公立の小学校と中学校の学費は、授業料が無料です。
公立学校の中には、教材費・給食費が無料の学校もあります。
一方で、インターナショナルスクールや日本人学校を含めた私立学校の学費は有料で高額になります。
学校の種類 | 年間の学費 |
---|---|
私立学校 | 約300~1100万ウォン(約25万~100万円) |
日本人学校 | 約350万ウォン(約30万円) |
インターナショナルスクール | 約1800~3000万ウォン(約160万~260万円 |
私立学校でも、年間で約300~1,100万ウォン(約25万~100万円)と、かなりの差があります。
最も高額なのが、名門私立と呼ばれる学校です。
例えば、先に挙げたソウル市のヨンフン小学校は、年間の学費だけで100万円近くかかります。
学費のほか、放課後の活動費や制服代などが加わりますから、お金持ちの家庭しか通わせることは難しいですよね…。
ですが、韓国は教育熱心な家庭が多く、少々の無理をしてでも子どもを私立学校に通わせたいと思うようです。
私立学校は、学費は高額ですが、小学校1年生の時から週に10時間以上も英語の授業があるなど教育の質は非常に高いと言われています。
さらに、様々な課外活動やイベントも盛りだくさん。
韓国では、子どもにいかに早い段階で高度な教育を受けさせることができるかが重要とされていて、それで将来が決まると考えている親が多いのです。
そのため、たとえ高額でも、子どもの教育には惜しみなくお金を注ぎ込むのですね。
日本人学校は、年間で30万ほどと、他の私立学校と比べると学費が安い印象です。
しかし、日本人学校に入学するためには、子どもの親である保護者が韓国に駐在していなければなりません。
インターナショナルスクールはもっと学費が高額で、年間で160万~260万円ほどかかります。
また、入学する子どもの海外経験の長さ、子どもの親のどちらかが外国籍などの条件もあります。
さらに、韓国のインターナショナルスクールは、義務教育機関とみなされないため、卒業しても韓国の大学を受験する資格が与えられない点にも注意してください。
韓国教育のその他の特徴
韓国の教育は、日本と比べると他にも特徴があります。
- 受験戦争スヌン
- 英語教育の徹底
それでは、ひとつずつ見ていきましょう。
特徴7.受験戦争スヌン
スヌンは韓国の大学入学者選抜試験のことで、日本で言うところのセンター試験です。
国内のほとんどの4年制大学が採用している入学試験方式で、韓国の受験生は皆、この試験に合格するために猛勉強をします。
毎年11月中旬に行われるスヌンは、受験生や家族にとっては人生の一大事で、韓国社会全体が受験生を応援します。
遅刻しそうな受験生がいたら警察が受験会場まで送迎したり、リスニング試験の時間帯を考慮して飛行機の離陸時間を調整したりと、国全体がスヌン一色に染まります。
日本人から見ると、異様な光景に見えるかもしれませんね。
韓国の学校は「実業系高校」と「一般系高校」いう学校区分で一本化され、入学試験はありません(特殊目的高校を除く)。
高い大学進学率と、人生において最初で最後の入学試験という背景があり、このように受験競争が白熱してしまうのです。
特徴8.英語教育の徹底
韓国では、1997年から小学校3年生以上に英語が必修化され、週2時間の授業が行われています。
インターナショナルスクール以外でも、幼稚園で英語の授業を行ったり、習い事で英語に通う子どもも多く、英語の早期教育が加速しています。
名門の私立小学校では、小学校1年生から1週間に15時間以上も英語の授業があります。
なぜこれほど英語教育に熱心かというと、韓国の企業は英語力に重点を置いて採用を決めるため。
韓国の有名な大企業に就職するには、最低でもTOEIC800点以上は必須とされているのです。
韓国の学校生活
給食
韓国にも、日本と同じく給食があります。
日本では中学や高校に上がると給食は無くなり、各自でお弁当を持参しなければならない学校もありますが、韓国では高校までしっかり給食を出してくれます。
食べ物を持ち歩く「お弁当」という文化があまり根付いていないのも理由のうちです。
メニューは主に韓国料理で、唐辛子を使用した辛いおかずなども出されます。
韓国の子どもたちは、辛い食べ物に対する苦手意識があまりないようです。
給食の動画はこちらを参考にしてください。
放課後の過ごし方
韓国の子ども達は、放課後に友達と遊ぶことがあまりありません。
なぜなら、多くの子どもが小学校の頃から塾に通っているからです。
一世一代の勝負である大学入学試験スヌンを突破する為に、小さい頃から勉強をしているのですね。
塾の中でも、外国語教室は特に人気があります。
韓国で就職するためには、英語はもちろんの事、さらにもう1言語できた方が望ましいというシビアな現実が背景にある為です。
また、自宅ではゲームで遊ぶ子どもが多いです。
しかし、韓国ではゲーム依存を含むネット依存が社会問題となっていて、ゲームを敬遠する親も増えているようですね。
まとめ
ここまで、韓国の教育制度について紹介してきました。
日本と比べると、韓国では様々な違いがありましたね。
最後に簡単にまとめてみました。
- 小学入学は抽選で決まる
- 中学受験と高校受験がない(一部例外あり)
- 学校は2学期制
- 4年制大学の進学率60%以上
- 英語力が就職に大きく影響する
公立学校の小学校が抽選だったり、中学受験や高校受験がないのは私たち日本人にとっては結構驚きですよね!
また、高校生の60%以上が4年制大学に進学するというのも、受験戦争で有名な韓国ならではなのでしょうね。
もし、子どもを連れて韓国に住むことになったり、子どもが留学したいといってきた時に、参考にしていただけたら嬉しいです。