シンガポールの教育制度と特徴を詳しく解説!PISA世界2位の秘訣

シンガポールは、面積が東京23区より少し大きい程度、人口約560万足らずの小さな国です。

しかし、国家予算の約20%も教育にかけ、実際に2018年の国際学力テスト(PISA)で世界2位となり、近年世界中で話題になっています。

そのため、シンガポールのハイレベルな教育環境で子どもを育てようと、海外の富裕層が集まっています。

ただ、日本にいると、シンガポールでどのような教育が行われているか、なかなか情報が入ってきません。

私たち編集部も子を持つ親として、日本とシンガポールの教育の質の差が気になっていました。

そこで、今回はシンガポールの教育制度がどのようなものか、資料や友人知人への聞き込みなど様々な情報を集め、日本との違いをまとめてみました。

まずは、シンガポールの教育制度の概要を見ていきましょう。

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シンガポールの教育制度と特徴

項目 内容
学校制度 6・4(又は5)・2(又は3)制
義務教育 6~12歳
学校年度 1月2日~11月16日
学期制 2学期制
学費 公立:シンガポール国民,PD,DPなど持っている滞在資格により異なる

私立:有料(費用は学校により異なる)

(参考:外務省 諸外国・地域の学校情報 シンガポール

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シンガポールの教育課程

(参考:文部科学省 学校系統図 シンガポール

特徴1.義務教育は6年間のみ

シンガポールの義務教育期間は、6歳から12歳の6年間です。

日本の義務教育は6歳から15歳までの9年間なので、日本よりも短く設定されています。

義務教育期間に通うのは小学校(プライマリースクール)です。小学校1学年~6学年は、Prim1~Prim6と表記します。

シンガポールでは、小学校に子どもを通わせない保護者には、罰則が課せられます。

また、国の教育省から許可を受ければ、学校に通わず家庭で学習を行うホームスクーリングも可能です。

特徴2.保育園や幼稚園選びも重要

シンガポールでは、義務教育期間ではない未就学児の時から親の教育に熱が入ります。

幼少期の学習を重視していて、小学校入学前の教育保育期間であるプレスクール(幼稚園・保育園等)でも、英語やそろばん、プログラミング等の授業が行われています。

保育園や幼稚園は次のように呼ばれます。

就学前教育

保育園(2~6歳児):Child Care Centre/Nursery School

幼稚園(3~6歳児):Kindergarten

人気の保育園や幼稚園では、子どもが産まれてすぐに入園希望を出さないと入園できないところもあります。

ただ、園がたくさんある上、日本のように入園条件が厳しくなく、共働きでなくても入れるところも多いので、どこかしら入園することは可能なようです。

保育園や幼稚園では、英語や母国語(中国語、マレー語、タミル語)、算数などを主に学びます。

費用は通う園の種類によっても様々。

ローカルスクール(現地の幼稚園)で毎月の保育料が5万円~8万円ほど。一方、インターナショナルスクールなどですと月25万円以上もかかるとこともあります。

ただ、学歴社会であるシンガポールでは、教育にお金をかけることは惜しまない家庭が多いので、より良い教育環境を求めて、人気の園に通わせたがるようです。

特徴3.公立小学校入学は応募制

希望する公立小学校に入りたい場合は応募する必要があります。

シンガポールには学区というものがありません。つまり、自宅の近くの小学校に通えるという保証はないのです。

教育熱心な親は、小学校卒業時に行うPSLE(Primary School Leaving Examination)という全国統一テストのスコアが高い学校に通わせようとします。

そのため、人気校に入学の応募が殺到します。定員を超えたら抽選となるため、発表されるまで親は気が気でないのです。

また、入学の申請では、シンガポール人や永住者(PR)が優先され、私たちのような外国人は定員に余裕がある場合のみ申請できます。

日本人が外国人枠で入学を希望する場合は、日本人学校やインターナショナルスクールも視野に入れる必要があるでしょう。

特徴4.小学校卒業時のPSLEがその後の人生を左右

シンガポールの親や子どもにとって、小学校卒業時に受けるPSLEは一大イベント。

なぜなら、PSLEの結果でその後の進路が大きく変わってくるためです。

PSLEが重要なのは、次の2つの理由からです。

  1. 卒業資格を得る
  2. 進学先が決まる

PSLEの結果が不合格の場合、留年してしまいます。ちなみに毎年約2%ほどの生徒が留年するそうです。

また、PSLEの結果で、義務教育後の進学先が決まります。

PSLEの試験で良い成績を残すため、シンガポールの子どもたちは毎日たくさんの宿題をこなし、放課後は塾に通うのです。

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特徴5.英国式GCE制度を採用

それは、英国式のGCE(General Certificate of Education)という大学の入学試験制度を採用しているためです。

  • GCE N(Normal) Level
  • GCE O(Ordinary) Level
  • GCE A(Advanced) Level

GCE N(Normal) Levelは、中等教育の卒業試験です。

GCE O(Ordinary) Levelは、ジュニアカレッジに進学するための試験です。

GCE A(Advanced) Levelは、大学入学試験です。この成績が良いと大学に進学することができます。

(参考:文部科学省 学校系統図 シンガポール

特徴6.中学校は3つのコースに分かれる

小学校で義務教育が終わった後は、中学校(Secondary School)に進学します。

シンガポールでは、中学校の約75%ほどが国立校です。

中学校は3つのコースに分かれています

中学校の3つのコース

エクスプレス:大学進学コース 

ノーマル(アカデミック):普通科コース 

ノーマル(テクニカル):職業訓練コース

これは、シンガポール独自のストリーミング制と言われています。

スクリーミング制とは、生徒の学力によって進路や学習年数が決まる早期英才教育システムです。

エクスプレスコースは、学業優秀な生徒が大学進学を目指すコースです。

学力を重視するシンガポールでは、約65%の生徒がこちらに進みます。

通常は4年間通い、卒業前にGCE O Levelの試験を受けて次の進路が決まります。

ノーマル(アカデミック)コースは、成績が平均的な生徒が通うコースです。約20%が進学します。

このコースは、通常4年目にGCE N Levelの試験を受けます。大学進学を希望する生徒は、さらにもう1年通い、GCE O Levelの試験を受ける場合もあります。

いきなりGCE O Levelの試験を受けることはできません。

最後のノーマル(テクニカル)コースは、勉強があまり得意でない生徒が通うコースで職業訓練校のような位置づけです。約15%が進学します。

こちらのコースでも、卒業する4年目にGCE N Levelの試験を受けます。

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特徴7.中学卒業後の4つのコース

中学校を卒業したら4つのコースに分かれます。

中学卒業後の4つのコース

ジュニアカレッジ:難関大進学専用の高校

普通高校:大学進学または就職を目指す高校

ポリテクニック:高等専門学校

ITE:職業訓練校

ジュニアカレッジ(Junior College)は、難関大学に進学を希望する生徒が集まる高校で、2年間通います。

GCE O Level試験に合格しないと進学できません。

卒業前にGCE A Levelの試験を受けて、大学進学を目指します。

普通高校には2年通い、大学進学または就職を希望する生徒が集まります。

大学へ進学したい場合は、GCE A Levelの試験を受けます。

ポリテクニックは、専門技術を学ぶ高等専門学校。

3年ほど通い、卒業後に就職します。

ITE(技術教育学院)は、国立の職業訓練校です。

2~3年通い、その後ポリテクニックでさらに2~3年学んで就職します。

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特徴.8大学進学率はたったの30%前後

シンガポールで大学に進学する生徒は、たったの30%前後しかいません。

日本の大学進学率は約60%を超えるので、約半分程度ということになります。

大学進学率が低い理由は、大きく分けると2つあります。

1つは、国内に公立と私立あわせて8校しかないこと。

2020年世界大学ランキング25位(東大は36位)である、名門シンガポール国立大学や同48位の南洋理工大学はじめ、少ないながらハイレベルな大学が多いため、非常に狭き門となっているのです。

もう1つは、シンガポールの就職までの職業訓練教育が優れている点です。

中学卒業後に、就職に向けたカリキュラムが充実していて、早期に目標を決めて、じっくり学んで技術を習得できます。

そのため、就職する時には高い技術をもっている場合が多く、専門分野で起業する人も多いという特徴があります。

つまり、大学進学だけがエリートではないということですね。

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シンガポールの年間スケジュール

日本と違い、シンガポールは2学期制をとっています。

一般的には、下記のスケジュールとなります。

シンガポールの学期

1学期:1月2日~5月25日

2学期:6月25日~11月16日

1月2日から5月25日までが1学期、長期休暇を挟んで6月25日から11月16日までが2学期とされています。

1月はじめに新学期が始まるというのは、お正月の時期を過ごしている日本では不思議な感覚ですよね。

続いて、シンガポールの休暇を見てみましょう。

シンガポールの長期休暇

春休み:3月中旬(約1週間)

夏休み:5月下旬~6月下旬(約4週間)

秋休み:9月中旬(約1週間)

学年末休み:11月下旬~12月下旬(約6週間)

長期休暇は、学期末にある約1か月の休みが2回です。

その他に、1学期、2学期中にも1週間ほどの短い連休があります。

日本と比べると、シンガポールは国民の祝日も約10日ほど少ないので、休みがあまりない印象です。

シンガポールの子どもたちは、長期休暇にリゾート地のセントーサ島、ボタニックガーデンなどの観光地で過ごす他、海外旅行に出かけることも多いようです。

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シンガポール公立学校の学費

シンガポールでは、義務教育期間である公立の小学校でも、全ての生徒の授業料が無料になるわけではありません。

シンガポール国民、永住権保持者(PR)、家族ビザである帯同査証の保持者(DP)など滞在資格によって異なるのです。

為替などでも多少変化しますが、一般的な小学校~高校までの学費はこちらです。

滞在資格小学校学費/月中学校学費/月高等学校学費/月
シンガポール国民無料約400円約500円
永住権保持者約1万2千円約3万円約3万5千円
帯同査証保持者約5万2千円約10万円約13万円

※為替SGD(シンガポールドル)で1SGD=80円の場合で計算

シンガポール国民は、小学校の授業料が無料です。中学校や高校も毎月500円程度と無料に近い感じですね。ただ、教材費や制服な雑費は有料になります。

永住権保持者と帯同査証保持者は有料になります。もちろん、教材費なども有料です。

そして、帯同査証保持者に比べると、永住権保持者の方が学費がはるかに安くなります。そのため、永住権獲得を目指す人も多いのだとか。

私たち日本人など外国人にとって、シンガポールの学校に通うのは、学費の面からもハードルが高いと言えるでしょう。

シンガポールの私立学校の学費

日本人が私立学校に通う場合、日本人学校とインターナショナルスクール(インター)の2種類あります。

学校小学校学費/月中学校学費/月高等学校学費/月
日本人学校約5万5千円約6万円約20万~25万円
インター約20万~30万円約15万~35万円約20万~30万円

※為替SGD(シンガポールドル)で1SGD=80円の場合で計算

私立学校でも、永住権保持者と帯同査証保持者では、特に小学校、中学校の学費に大きな差があります。

シンガポールの日本人学校に小学校~高校まで通わせるための学費と、日本の一般的な私立学校に小学校~高校まで通わせるための学費が、だいたい同じくらいと言われています。

また、シンガポールのインターナショナルスクールに小学校~高校まで通わせるためにかかる学費は、日本で小学校~高校まで通わせるためにかかる学費よりも、約1,000万円ほど高くなるようです。

つまり、シンガポールで私立学校に通わせるとなると、かなりの収入や資産がないと難しいということですね。

富裕層がシンガポールに集まり、お金がない家庭は住むことが厳しいのも頷けます。

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シンガポール教育その他の特徴

シンガポールの教育は、日本と比べると他にも特徴があります。

シンガポール教育その他の特徴

  1. 段階的にストリーミング制が廃止
  2. バイリンガル教育の実施
  3. 国際学力テストでトップクラス

それでは、ひとつずつ見ていきましょう。

特徴9.ストリーミング制が2024年から段階的に廃止

近年、シンガポールで1980年代から40年続いていたストリーミング制が廃止の方向に向かっています。

2024年から4年間かけて段階的に廃止していくとのこと。

この制度によりレベルの低いクラスに入った生徒は、受ける教育の質も低く、将来的に優秀な人材が育たないと言う問題点が要因のようです。

PSLEの結果で、将来の大学進学や、就職先にまで大きな影響を与えるのは良くないということですね。

具体的には、イギリスのケンブリッジ大学と共通の「国際基準の教育評価制度」が導入され、現在の3つのコースを1つに統合し、それぞれG1・ G2 ・G3という科目ごとにレベル分けするようです。

特徴10.バイリンガル教育の実施

多民族国家であるシンガポールでは、母国語(中国語、マレー語、タミル語)と、公用語である英語を修得する、バイリンガル教育が幼児期から実施されています。

母国語の授業は、伝統を継承していくために行われますが、その他の授業は全て母国語ではない英語で行われます。

日本人から見ると、母国語ではない言語を公用語としている事にも違和感を覚えてしまいますが、幼少期からバイリンガルとして育てられるため、3~4言語を話すことができるシンガポール人も多く見られます。

たくさんの外国企業の参入によって繁栄してきたシンガポールでは、バイリンガル教育の実施はもはや国の政策なのです。

特徴11.国際学力テストでトップクラス

教育水準が世界でもトップクラスの国として有名なシンガポール。

経済協力開発機構(OECD)が実施している国際学習到達度調査PISA(International Student Assessment)でも 常に上位にランクインしています。

特に、2015年の調査対象の読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野とも世界一位を独占しました。

その背景には、国家予算の約20%を「教育」に当てているという、政府のバックアップがあります。

マレーシアから独立した当初、小国で資源がなく貧困にあえいでいたシンガポール国家の原動力となったものが、「教育」だったのも大きいでしょう。

教育の質が高まるにつれ、優秀な人材を数多く生み出し、現在は小国ながらアジアで影響力を持つ国にまで成長しました。

また、一般家庭でも、子供の教育には投資を惜しまない、という考えが根付いています。

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シンガポールの学校生活

給食

多様な文化が集まる国シンガポールの給食は、生徒の宗教に配慮したメニューを用意してくれます。豚肉や牛肉は使わず、鶏肉や野菜、魚等でバランス良く作られています。

また、オンラインの学校給食注文サービス「Whizmeal」と提携している学校では、ウェブサイトで給食のメニューを選び、注文することができます。

生徒一人一人のアレルギーにも対応できる上、サイズもS・M・Lの3種類から選ぶことも可能です。

残飯も減るし、良いシステムですね。

放課後の過ごし方

幼少期から教育に熱心なシンガポールでは、放課後にも学習塾に通う子どもが多く見られます。

学校のクラブ活動にも、ホームワーククラブという、授業や宿題の補習をしてくれるありがたいクラブ活動があります。

スポーツ系では日本同様にサッカーや野球が人気で、クラブチームで本格的にやっている子どももいます。

ちなみに書道や茶道など、日系の教室も多くあるのは、多国籍文化の集まるシンガポールならではですね。

まとめ

ここまで、シンガポールの教育制度について紹介してきました。

日本と比べると、シンガポールでは様々な違いがありましたね。最後に簡単にまとめてみました。

まとめ
  • 親は保育園や幼稚園選びから白熱
  • 義務教育期間はたった6年間
  • ストリーミング制を導入した英才教育
  • シンガポール国民でないと学費が高い
  • 大学進学率は30%程度
  • バイリンガル教育の徹底

シンガポールは、義務教育がたったの6年間というのは驚きました。

しかし、早期に自立心を芽生えさせ、自分の将来の進路を決めさせるというスパルタな感じが、シンガポールの学力の高さを支えているのだなとも感じました。

また、入学や学費などの面においてシンガポール国民を優遇し、外国人がシンガポールの学校に入るのは、他の国と比べてハードルが高いのも良く分かりました。

ただ、教育プログラムもしっかりしているので、真剣に勉学に取り組む子どもにとっては、ハイレベルな環境で切磋琢磨できるという意味では、理想的なのかもしれませんね。

以上がシンガポールの教育制度と特徴でした。

もし、子どもを連れてシンガポールに住むことになったり、子どもが留学したいといってきた時に、参考にしていただけたら嬉しいです。

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